弾き歌いをピアノのレッスンに取り入れる理由

歌と伴奏のスタイルは音楽の基本。純粋なハーモニーの響きの美しさや、音のバランスの黄金比を感じ取ることができれば、ピアノ演奏も大きく変化します。

当ピアノ教室では、「弾き歌い」をレッスンに取り入れています。伴奏も歌のパートも優しめで、初中級程度の力があれば、ちょっと練習すれば、歌のパートもピアノの伴奏もすぐに演奏できるようになるので、「コンコーネ」が私のお気に入りです。

声楽のレッスンでは必須の教本、コンコーネですが、ピアノ演奏の視点からみてもこの教本を活用するメリットはたくさんあります。ピアノの教本からはなかなか感じられない、旋律と伴奏が美しく共鳴し合う「純粋な響き」と絶妙な音のバランス感覚といった、音楽の旨味と音の本質を、この教材を通して学ぶことができます。

ピアノというデジタル楽器の弱点。それはハーモニーの歪み。あなたはこの歪みに気づいていますか。

一言で赤といえども、こんなにたくさんの色が存在します。

色の種類は無限です。赤という色だけでもいくつもの色味が存在します。2色以上の色を混ぜ合わせれば、色の種類の数はさらに無限に広がります。

“絵画ではどんな色でも自由に使えますが、西洋音楽が使う音の高さはドレミ….と不連続にデジタル化されています。そういう意味では音楽は不自由です。“(小方厚著「音律と音階の科学」より)

ドレミの組み合わせで作られる音楽は、デジタル芸術といえます。ですが、声楽や弦楽器などの自分で音を作り出さなければならない楽器の場合は、極端な話、ドに限りなく近いレの音から、ドとレの中間の音、レに限りなく近いドの音、純粋なレの音まで、たくさんの音を奏でることが可能です。(弦楽器は私は経験がないのでどこまで可能なのか分かりませんが、少なくとも声楽では可能なことは、皆さんにもお分かりいただけるかと思います。)

ですので、自分で音の高さを作れる楽器は、アナログであると言えます。

アナログ楽器の長所は、濁りや歪みのない、純粋な美しいハーモニーを作ることができることです。

あらかじめ調弦が施されているピアノは、その点で言うと、ドレミの高さが全て固定されていますのでデジタル楽器です。

例えば、ピアノの中心に近いドの音から
ド 261.6HZ(ヘルツ)
レ 293.7HZ
ミ 329.6HZ
ファ349.2HZ
ソ 392.0HZ
ラ 440.0HZ(もしくは442HZ)
シ 493.9HZ
ド 523.3HZ

というように、ピアノは全部で88個鍵盤がありますが、88鍵全ての音にそれぞれ決められた周波数値があります。(ピアノの調律師さんは、熟練された方ほど音叉を使わずにご自身の耳で調律するので、上記の数値は理論上といったところなのかなと思います。コンピューターのように狂いもなく正確に音を設定するというよりは、調律師の耳とセンス、経験、合わせる楽器や室内の温度、湿度などによって、ピアノの調律も個体差が出てくるものです。そう考えると、ピアノも実はアナログ的な要素がたくさんありますね。奥が深い!なので、普段から自分の好みの音でピアノを楽しみたければ、どの調律師さんにピアノの調律をお願いするのかということも、かなり重要だったりします。)

この方法で調弦をすると、88鍵あるどの鍵盤の音から始めても、ドレミファソラシドなどの音階を、音がでこぼこせずに、聴き心地の良い滑らかな響きで奏でることができます。(平均律と言います。)

しかし、この平均律には欠点もあります。それが、ドミソなどの和音(ハーモニー)を弾いた時に生じる響きの歪みです。前述した通り、様々な音階を奏でるために、多少の数値の誤差が生じても無理矢理ドレミの音を作ってしまったため、横の音階の並びは美しくても、縦のドミソなどのハーモニーの響きは、音同士がうまく共鳴せず、どうしても微妙な歪みが出てしまうのです。

クラス分けを例にわかりやすく説明してみます。

120名の子どもたちを30名ずつ4クラスに分けるとします。それぞれの性格や学業の成績、運動神経などを配慮してクラス替えをしますよね。1組がぶっちぎりで頭が良い!みたいにならないように、4クラス平均的になるように、先生たちも苦労してメンバーを決めていきます。(これが、ピアノでいう音階の響きです。)

そうすると、4クラスの全体としては、でこぼこせずにバランスよく見えますが、クラスごとに視点を移すと、A子ちゃんとB子ちゃん、C子ちゃんの仲はいまいちだったり…なんてことは普通に起こり得ますよね。(これが、ピアノでいうハーモニーの歪んだ響きです。)

じゃあ、みんな仲良しこよし!のクラス編成をしようとすると、今度は、4組が異常に成績が悪い!みたいになってしまう。

一方を優先させると、もう一方はその皺寄せが来るという典型的な例ですね。ピアノの場合は、横の旋律の滑らかさを優先させたがために、縦のハーモニーの響きを若干犠牲にするしかなかったのです。

そしてこの歪みは声楽などのアナログ楽器のみの演奏では起こりません(もっとも、歪みを聞き分けられる耳と感性を持つ人が演奏すれば、の話です)。よく調和した純粋な響きはとても心地よいので、コーラスなどで「今すごく綺麗にハモったな」とゾクゾクする感覚を味わった時は、平均律ではない純正律と呼ばれるハーモニーを作れたからなのです。

絵画で例えると、何種類もの色使いのその絶妙な配色にうっとりするといった感じです。恍惚感は似てるかな。

http://www.metmuseum.org/art/collection/search/436090

この「ゾクゾクする」感動、心地よさは、ピアノと歌との組み合わせでも体感できます。そして、この「コンコーネ」は、音楽の構成がシンプルゆえに、このハモった感を味わいやすいのです。

さらに、自分で歌い、自分でその歌声の響きに合うように、ピアノの音色をコントロールできるため、絶妙なバランス感覚を養うことができます。

先ほど、ピアノはデジタル楽器だと書きましたが、厳密にいうと、こちらが意図すれば音の高さや音の明るさを微妙に変えることができるので、ピアノはアナログ化できる柔軟性のあるデジタル楽器とも言えそうです。

色の数まではいかなくとも、ピアノも音色という観点からいうと、多彩な響きを表現できます。(ただし電子ピアノには限界があります)

歌のメロディーが明るい響きであれば、ピアノも同じく明るめに歌の響きに溶け込むように、歌が暗ければピアノも暗めに…が基本ですが、前後の曲想の関係などいろんな要素をみて、伴奏をどのように歌に寄り添わせるのかが決まるので、実際にレッスンを何度か受けていただくのが一番良いと思います。

ピアノしか弾いたことのない人は、音と響きの調和の真の美しさを知らないままでいます

衝撃的な話かもしれませんが、歪んだハーモニー感しか味わったことがないので、当然です。私もかつてはそうでした。

大学に入って初めてホルンを手にし、吹奏楽とオーケストラを経験しましたが、最初の頃は、楽器の響きがピアノとあまりに違いすぎて、自分が吹いている音がわからなくなるほどのカルチャーショックを受けました。

デジタル楽器をデジタル楽器としてしか意識しないと、アナログ楽器と合わせた時に響きが調和しません。ピアノの音色を操作し、限りなく歌やヴァイオリンなどの楽器の特性に合わせることが必須となります。

相手の音や呼吸、どのような音楽を奏でたいと望んでいるのかを聴き取り察知し、同時に自分のピアノの音にも耳を傾けて、双方の響きのバランスを調整する。これがアンサンブルの基本です。

このアンサンブルの練習として、自分1人でも日々楽しみながら手軽にトレーニングできるのがコンコーネです。

とにかく、絶妙の美のバランスで歌声をピアノが調和した時の恍惚感は、なんとも言えない体験です。味わってみたい方は是非、コンコーネを手にして、弾き歌いにチャレンジしてみてくださいね。

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2020.10.5

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